令和元年度携帯電話におけるリサイクルの取り組み状況について
令和2年9月2日
モバイル・リサイクル・ネットワーク
一般社団法人 電気通信事業者協会
一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会
令和元年度携帯電話における
リサイクルの取り組み状況について
~回収率は横ばい・回収台数は微減~
一般社団法人電気通信事業者協会(TCA)と一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)は、「モバイル・リサイクル・ネットワーク(MRN)」として携帯電話・PHSにおける資源の有効利用について取り組んでいます。
TCAでは携帯電話事業者等の協力を得て、平成13年4月からMRNを立ち上げ、サービス提供事業者、製造メーカーに関係なく、使用済みの携帯電話の本体、電池、充電器を全国約9,000店舗ある専売店を中心に、自主的に回収する活動を推進しており、令和元年度までに累計で約1億4,000万台の端末を回収しています。
また、リデュース(抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再資源化)については、CIAJが製造メーカーにおける指針として「携帯電話・PHSの製品環境アセスメントガイドライン」を平成13年3月に制定し、製品アセスメントを実施する等の3R活動を推進しています。
今般、令和元年度のリサイクルの実績に関するとりまとめが完了しましたので、お知らせします。
1. 令和元年度リサイクル実績と再資源化状況について
(1) リサイクル実績について
令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 | 平成28年度 | |||||
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回収台数 (千台) |
回収重量 (t) |
回収台数 (千台) |
回収重量 (t) |
回収台数 (千台) |
回収重量 (t) |
回収台数 (千台) |
回収重量 (t) |
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本体 | 4,951 | 533 | 5,305 | 531 | 6,021 | 581 | 5,621 | 564 |
電池 | 4,721 | 110 | 5,403 | 115 | 5,915 | 195 | 7,239 | 151 |
充電器 | 1,761 | 119 | 1,800 | 133 | 1,895 | 135 | 2,033 | 137 |
注)充電器とはACアダプタ・卓上ホルダ等を示す。
令和元年度の本体の回収台数は、前年度実績から減少となりました(約35万台減少:7%減少)。スマートフォンの普及等で、通信機器として使わなくなった端末を長期保管したり、リユース向けの売却等の手段が一般化するなかで、この傾向が継続するのか、事業者としての回収努力を続けながら注視しています。
(参考)年度別回収実績の推移(過去10年、単位:千台)
(2)再資源化状況について
端末に含まれる金属は、鉄、アルミニウム、マグネシウム、金、銀、銅などですが、金、銀、銅、パラジウムなどの金属は素材に戻し、再利用をしています。精錬の過程で発生するスラグは路盤材、湾岸施設(テトラポット中込材)などに利用されています。
また、金属以外の素材(プラスチック、ガラスなど)についてもリサイクル処理を実施しています。プラスチックは低温溶解により樹脂材となり、ハンガー等の日用品、プラスチック収納容器、玩具の筐体等に利用されています。
(3)自主的な数値目標に係る実績について
事業者によるリサイクル活動を推進するため、平成21年度から、自主的な数値目標を設定致しましたが、各数値目標に係る昨年度の実績は、以下のとおりとなりました。
指 標 | 目 標 | 実 績 | 前年度(参考) |
---|---|---|---|
① リサイクル活動の認知度 | 70% (*1) | 53.0% | 56.2% |
② マテリアルリサイクル率 | 70% (*2) | 72.6% | 74.8% |
③ 回収率 | 20% (*3)(*4) | 17.0% | 16.9% |
(*1) 「利用者の意識・行動に関するアンケート調査」により評価
(*2) MRNとしての端末本体のマテリアルリサイクル率(回収した端末から採取できる金属等のリサイクル率:熱回収分は除いている)
(*3) 事業者全体の回収率
=「事業者全体の専売店等でのリサイクル目的の回収台数」÷(「専売店等での機種変更」
+「任意解約数」)
(*4) 回収率目標については、リユース目的の下取りの増加を考慮し、平成29年度から見直した。
今回、回収率は17.0%で、昨年比0.1ポイントの増加に留まりました。高度で多様な端末機能を有し、契約解除後も無線LANによる利用が可能であるという特性に起因して二次利用が多く、店頭におけるリユースのための事業者による下取りが一定の割合で存在するスマートフォンが普及しつつある中で、回収率の増加は難しい局面を迎えているようです。あるいは、新型コロナウィルス感染症による来店抑制の影響が出ているのかもしれません。
一方、リサイクル活動の認知度は昨年比3.2ポイントダウンの53.0%となり、認知度アップに向けた周知活動の強化が今後の課題と言えます。
2.利用者の意識・行動に関するアンケート調査結果について
リサイクルに関する実態を調べるため、携帯電話利用者約2,000人に対するアンケート調査を実施しました。(添付資料1参照)。
- 過去1年間に買換・解約等により端末を処分したことがある人の割合は18%であり、前年度との比較では、2ポイントの減少となりました。
※ 処分したことのある人の中には、店舗で引き取ってもらったり、売却したり、他人に上げた人等が含まれます。 - また、処分方法としては、「専売ショップでリサイクル目的で引き取ってもらった」と「専売ショップで下取りをしてもらった」の合計が、70%でした。
- 通信機器として利用中のもの以外に端末を保有している人の保有理由(複数回答)を見ると、「特に理由は無いが手放し難い」が25%、「保存しておきたいデータ(写真、メール、コンテンツ等)があるが移行できなかったため」が21%、「コレクション、思い出として保存(端末に愛着がある)」が20%と続きました。昨年度と比較すると、「保存しておきたいデータ(写真、メール、コンテンツ等)があるが移行できなかったため」と「コレクション、思い出として保存(端末に愛着がある)」とが逆転しましたが、これら2つを5ポイントほど引き離して「特に理由は無いが手放し難い」が継続してトップを占めました。
「個人情報が漏れるのが心配」とする回答が12%あり、個人情報に関する懸念も窺えます。また、「どのように処分したらいいかわからないから」も11%ありました。データ移行の可能性の周知や店頭での支援、MRN参加店舗であれば十分な個人情報保護措置を講じられていることについての踏み込んだ周知やリサイクルの認知度向上のための一層の周知活動が引き続き必要であると考えられます。 - 通信機器として利用中のもの以外の保有端末を今後「処分してもよい」「まあ処分してもよい」と回答した人は、その保有端末がスマートフォンの場合50%で、従来型の端末の場合の60%を10ポイントも下回っており、また「処分したくない」「あまり処分したくない」と回答した人は、逆に対象の端末が従来型の場合は19%なのに比べて、スマートフォンの場合は26%と上回っています。このことは、利用者の端末処分に当たっての意向が、処分端末がスマートフォンの場合、従来型の端末と比較して、処分方向には抑制的で、保有方向に積極的に働くことを示しています。この傾向は、昨年度よりも一層進行しており、スマートフォンの一層の普及と相俟って、回収率の伸び悩みにつながるものと懸念されます。
- 不要端末の処分方法についての自治体からのお知らせを見たことのある人は、20%であり、毎年増減があるものの、大きな変化はありません。周知に関する自治体の一層の協力が期待されます。
なお、「自治体からのお知らせを見たことがある」人の認知経路としては、「広報紙」が最も高く、その他「ゴミカレンダー」や「ゴミ分別マニュアル」が主な認知経路として機能しているようです。 - MRNによるリサイクルに関する認知度は、ロゴマークも含めやや減少状況であり、地道な周知活動の継続のみならず、その強化が必要だと考えられます。
MRNの認知度:昨年度調査56%→今年度調査53%
ロゴの認知度 :昨年度調査19%→今年度調査18% - 端末リサイクルの意義やMRNの紹介を述べた文章を提示したうえで、今後の回収リサイクルへの協力意向を聞いたところ、全体で66%が積極意向(「とても協力したい」+「まあ協力したい」)を示しました。男女別では女性が72%、年代別では10代が75%の積極意向を示したのが特徴的ですが、先述の通り、スマートフォンの一層の普及に伴う回収率伸び悩みの懸念がある中、積極意向を示す層を中心に端末リサイクルの気運を改めて高めて行くためには何が必要なのか等、検討していくことが今後の課題と考えられます。
3.リサイクル向上に向けた今後の対応について
(1)認知度の向上等に向けた施策展開
MRNの内容等について、ホームページ・カタログ・取扱説明書などにおける周知、専売店等におけるリサイクル紹介ポスターやステッカー等の掲示ならびに説明用ツールの配備、マスコミ等の取材などの機会を捉えた訴求、ゴミの収集を行う自治体への周知協力依頼等を行っていきます。そして、回収を促進するため、専売店等の店頭における買換・解約時の案内を引き続き強化していきます。
(2)回収機会の拡大
家電量販店、情報通信機器メーカー、その他関係団体との連携を深める等、より多くの排出機会や利用者接点において、適正な個人情報管理を行いつつ回収機会の増大を図るとともに、周知活動の強化を行っていきます。
(3)回収可能性を高める対策
- 端末内に保存・蓄積した情報やデータ(写真、メール等)に愛着を感じているという利用者の声に対する対策として、保存・蓄積したデータの新端末への移行やバックアップについての利用者への周知や店頭での支援を強化していきます。
- 端末内の個人情報漏えいを心配する利用者の声に対する対策として、回収時における確実なリセット等の実施及びこれらの運用管理を徹底するとともに、MRN参加店舗においては安心して使用済み端末を預けていただけることの利用者への周知を強化していきます。
(4)3Rに対する取組み
- CIAJメンバーの国内製造メーカー5社により、スマートフォンを含む携帯電話・PHS・データ通信端末を対象として「令和元年度 携帯電話・PHSにおける製品環境アセスメント評価」を6月に実施致しました。各社とも、スマートフォンの普及が進む中、機能アップをすると共に薄型化,軽量化,低消費電力化を進め、「製品環境アセスメントガイドライン」を考慮した設計を行っており、3Rを積極的に推進している状況が確認できました。
- スマートフォンの伸長に伴って、高機能化・薄型化・デザイン性重視の傾向がますます強くなっていますが、3Rに対する関心も社会的なレベルで一層高くなってきています。 「使用済み小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律」(小型家電リサイクル法)が施行されてから7年が経過し、地方自治体で携帯電話・PHSを含む小型家電を回収する仕組みが整備されてきていることから、各社は、顧客のニーズと3Rの双方の要求を満足させるべく、引き続き製品環境アセスメントの内容を考慮した製品設計への取り組みがさらに重要になっていると考えています。
各社の製品アセスメントに組み込まれている状況の推移を確認し、各社の携帯電話・PHSおよびデータ通信端末などの3Rの取り組みに向け、引き続き、より一層の活動を推進して参ります。
4.「モバイル・リサイクル・ネットワーク」への参加企業について
添付資料2のとおり。
添付資料2 モバイル・リサイクル・ネットワーク参加各社
(2020年7月1日現在)
通信事業者
- 株式会社NTTドコモ
- KDDI株式会社、沖縄セルラー電話株式会社
- ソフトバンク株式会社
- 楽天モバイル株式会社
販売会社
- 株式会社エディオン
製造メーカー
- 京セラ株式会社
- セイコーソリューションズ株式会社
- 日本電気株式会社
- 株式会社ネクス
- 株式会社日立国際電気