平成30年度携帯電話・PHSにおけるリサイクルの取り組み状況について
令和元年8月7日
モバイル・リサイクル・ネットワーク
一般社団法人 電気通信事業者協会
一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会
平成30年度携帯電話・PHSにおける
リサイクルの取り組み状況について
~回収率は増加・回収台数は横ばい~
一般社団法人電気通信事業者協会(TCA)と一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)は、「モバイル・リサイクル・ネットワーク(MRN)」として携帯電話・PHSにおける資源の有効利用について取り組んでいます。
TCAでは携帯電話・PHS事業者等の協力を得て、平成13年4月からMRNを立ち上げ、サービス提供事業者、製造メーカーに関係なく、使用済みの携帯電話・PHSの本体、電池、充電器を全国約9,000店舗ある専売店を中心に、自主的に回収する活動を推進しており、平成30年度までに累計で約1億3,500万台の端末を回収しています。
また、リデュース(抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再資源化)については、CIAJが製造メーカーにおける指針として「携帯電話・PHSの製品環境アセスメントガイドライン」を平成13年3月に制定し、製品アセスメントを実施する等の3R活動を推進しています。
今般、平成30年度のリサイクルの実績に関するとりまとめが完了しましたので、お知らせします。
1. 平成30年度リサイクル実績と再資源化状況について
(1) リサイクル実績について
平成30年度 | 平成29年度 | 平成28年度 | 平成27年度 | |||||
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回収台数 (千台) |
回収重量 (t) |
回収台数 (千台) |
回収重量 (t) |
回収台数 (千台) |
回収重量 (t) |
回収台数 (千台) |
回収重量 (t) |
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本体 | 5,305 | 531 | 6,021 | 581 | 5,621 | 564 | 5,658 | 565 |
電池 | 5,403 | 115 | 5,915 | 195 | 7,239 | 151 | 8,061 | 166 |
充電器 | 1,800 | 133 | 1,895 | 135 | 2,033 | 137 | 2,498 | 165 |
注)充電器とはACアダプタ・卓上ホルダ等を示す。
平成30年度の本体の回収台数は、前年度実績から減少となりました(約72万台減少:12%減少)。スマートフォンの普及等で、通信機器として使わなくなった端末を長期保管したり、リユース向けの売却等の手段が一般化するなかで、この傾向が継続するのか、事業者としての回収努力を続けながら注視したいところです。
(参考)年度別回収実績の推移(過去10年、単位:千台)
(2)再資源化状況について
端末に含まれる金属は、鉄、アルミニウム、マグネシウム、金、銀、銅などですが、金、銀、銅、パラジウムなどの金属は素材に戻し、再利用をしています。精錬の過程で発生するスラグは路盤材、湾岸施設(テトラポット中込材)などに利用されています。
また、金属以外の素材(プラスチック、ガラスなど)についてもリサイクル処理を実施しています。プラスチックは低温溶解により樹脂材となり、ハンガー等の日用品、プラスチック収納容器、玩具の筐体等に利用されています。
(3)自主的な数値目標に係る実績について
事業者によるリサイクル活動を推進するため、平成21年度から、自主的な数値目標を設定致しましたが、各数値目標に係る昨年度の実績は、以下のとおりとなりました。
指 標 | 目 標 | 実 績 | 前年度(参考) |
---|---|---|---|
① リサイクル活動の認知度 | 70% (*1) | 56.2% | 57.2% |
② マテリアルリサイクル率 | 70% (*2) | 74.8% | 72.9% |
③ 回収率 | 20% (*3)(*4) | 16.9% | 15.1% |
(*1) 「利用者の意識・行動に関するアンケート調査」により評価
(*2) MRNとしての端末本体のマテリアルリサイクル率(回収した端末から採取できる金属等のリサイクル率:熱回収分は除いている)
(*3) 事業者全体の回収率
=「事業者全体の専売店等でのリサイクル目的の回収台数」÷(「専売店等での機種変更」
+「任意解約数」)
(*4) 回収率目標については、リユース目的の下取りの増加を考慮し、平成29年度から見直した。
今回、回収率は昨年から1.8ポイント上回り、16.9%となりました。高度で多様な端末機能を有し、契約解除後も無線LANによる利用が可能であるという特性に起因して二次利用が多く、店頭におけるリユースのための事業者による下取りが一定の割合で存在するスマートフォンが普及しつつある中で、昨年比1.8ポイントの回収率アップは目標達成に向け大きく評価されます。しかし、他方でリサイクル活動の認知度は昨年比1ポイントダウンの56.2%となり、認知度アップに向けた周知活動の強化が今後の課題と言えます。
2.利用者の意識・行動に関するアンケート調査結果について
リサイクルに関する実態を調べるため、携帯電話・PHS利用者約2,000人に対するアンケート調査を実施しました。(添付資料1参照)。
- スマートフォンのユーザーは昨年度73%だったところ、今年度は78%にまで増加しました。
- 過去1年間に買換・解約等により端末を処分したことがある人の割合は20%であり、前年度との比較では、3ポイントの減少となりました。
※ 処分したことのある人の中には、店舗で引き取ってもらったり、売却したり、他人に上げた人等が含まれます。 - また、処分方法としては、「専売ショップでリサイクル目的で引き取ってもらった」と「専売ショップで下取りをしてもらった」の合計が、69%でした。また処分対象端末が、スマートフォンの場合、下取りや売却の比率が高い一方、従来型端末の「リサイクル目的」の比率が高い傾向も継続しています。
- 通信機器として利用中のもの以外に端末を保有している人の保有理由(複数回答)を見ると、「特に理由は無いが手放し難い」が25%、「コレクション、思い出として保存(端末に愛着がある)」が21%、「保存しておきたいデータ(写真、メール、コンテンツ等)があるが移行できなかったため」が18%と続き、昨年度と比較すると「特に理由は無いが手放し難い」と「コレクション、思い出として保存(端末に愛着がある)」とが逆転しました。
「個人情報が漏れるのが心配」とする回答が13%あり、個人情報に関する懸念も窺えます。また、「どのように処分したらいいかわからないから」も10%ありました。データ移行の可能性の周知や店頭での支援、MRN参加店舗であれば十分な個人情報保護措置を講じられていることについての踏み込んだ周知やリサイクルの認知度向上のための一層の周知活動が引き続き必要であると考えられます。 - 通信機器として利用中のもの以外の保有端末を今後「処分してもよい」「まあ処分してもよい」と回答した人は、その保有端末が従来型の端末の場合は54%でスマートフォンの場合の51%を上回っており、また「処分したくない」「あまり処分したくない」と回答した人は、逆に対象の端末が従来型の場合は22%なのに比べてスマートフォンの場合は26%と上回っています。このことは、利用者の端末処分に当たっての意向が、処分端末がスマートフォンの場合、従来型の端末と比較して、処分方向には抑制的で、保有方向には積極的に働くことを示しています。このような傾向が今後も継続・進行していくのか、あるいはスマートフォンがある程度普及した段階で何らかの収束を見るのか、今後も注視していく必要があります。
- 不要端末の処分方法についての自治体からのお知らせを見たことのある人は、18%であり、昨年度に比べ2ポイント減少しました。周知に関する自治体の一層の協力が期待されます。
なお、「自治体からのお知らせを見たことがある」人の認知経路としては、「広報紙」が最も高く、その他「ゴミカレンダー」や「ゴミ分別マニュアル」が主な認知経路として機能しているようです。 - MRNによるリサイクルに関する認知度は、ロゴマークも含め横這いからやや減少状況であり、浸透が進んでおらず、地道な周知活動の継続のみならず、その強化が必要だと考えられます。
MRNの認知度:昨年度調査57%→今年度調査56%
ロゴの認知度 :昨年度調査19%→今年度調査19% - 端末リサイクルの意義やMRNの紹介を述べた文章を提示したうえで、今後の回収リサイクルへの協力意向を聞いたところ、全体で64%が積極意向(「とても協力したい」+「まあ協力したい」)を示したこと、スマートフォンユーザーでも同様の64%が積極意向を示したことから、このような意向をどのようにして実際のMRNへの排出行動に結びつけるかが、今後の課題と考えられます。
3.リサイクル向上に向けた今後の対応について
(1)認知度の向上等に向けた施策展開
MRNの内容等について、ホームページ・カタログ・取扱説明書・請求書同封物などにおける周知、専売店等におけるリサイクル紹介ポスターやステッカー等の掲示ならびに説明用ツールの配備、マスコミ等の取材などの機会を捉えた訴求、ゴミの収集を行う自治体への周知協力依頼等を行っていきます。そして、回収を促進するため、専売店等の店頭における買換・解約時の案内を引き続き強化していきます。
(2)回収機会の拡大
家電量販店、情報通信機器メーカー、電気通信事業者等の団体及びその会員企業により設立された「携帯電話リサイクル推進協議会」の関係団体との連携を深める等、より多くの排出機会や利用者接点において、適正な個人情報管理を行いつつ回収機会の増大を図るとともに、周知活動の強化を行っていきます。
(3)回収可能性を高める対策
- 端末内に保存・蓄積した情報やデータ(写真、メール等)に愛着を感じているという利用者の声に対する対策として、保存・蓄積したデータの新端末への移行やバックアップについての利用者への周知や店頭での支援を強化していきます。
- 端末内の個人情報漏えいを心配する利用者の声に対する対策として、回収時における確実なリセットや破砕機による端末の破砕(ボタンへの穴あけ)等の実施及びこれらの運用管理を徹底するとともに、MRN参加店舗においては安心して使用済み端末を預けていただけることの利用者への周知を強化していきます。
(4)3Rに対する取組み
- CIAJメンバーの国内製造メーカー9社により、スマートフォンを含む携帯電話・PHS・データ通信端末を対象として「平成30年度 携帯電話・PHSにおける製品環境アセスメント評価」を3月に実施しました。各社とも、スマートフォンの普及が進む中、機能アップをすると共に薄型化,軽量化,低消費電力化を進め、「製品環境アセスメントガイドライン」を考慮した設計を行っており、3Rを積極的に推進している状況が確認されました。(添付資料2)。
- 携帯電話・PHSではスマートフォンの伸長に伴って、高機能化・薄型化・デザイン性重視の傾向がますます強くなっていますが、3Rに対する関心も社会的なレベルで一層高くなってきています。 「使用済み小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律」(小型家電リサイクル法)が施行されてから6年が経過し、地方自治体で携帯電話・PHSを含む小型家電を回収する仕組みが整備されてきていることから、各社は、顧客のニーズと3Rの双方の要求を満足させるべく、引き続き製品環境アセスメントの内容を考慮した製品設計への取り組みがさらに重要になっていると考えています。
各社の製品アセスメントに組み込まれている状況の推移を確認し、各社の携帯電話・PHSおよびデータ通信端末などの3Rの取り組みに向け、引き続き、より一層の活動を推進して参ります。
4.「モバイル・リサイクル・ネットワーク」への参加企業について
添付資料3のとおり。
添付資料2 平成30年度 携帯電話・PHSにおける製品環境アセスメント評価の結果報告について
令和元年8月7日
一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会
移動通信委員会
平成30年度 携帯電話・PHSにおける製品環境アセスメント評価の結果報告について
一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)は、一般社団法人電気通信事業者協会(TCA)と共同で、自主活動組織「モバイル・リサイクル・ネットワーク」にて、携帯電話・PHSにかかる資源の有効利用について取り組んでいます。その一環として、移動通信委員会では、3R(リデュース(削減)、リユース(再使用)、リサイクル(再生))について、「携帯電話・PHSの製品環境アセスメントガイドライン」を制定し、メーカーにおける指針としています。
今般、会員各社の協力を得て、平成30年度の製品環境アセスメントを実施しましたので、その結果を公表します。
1.アセスメントの概要
- 実施期間:平成31年3月
- 参加会社:移動通信委員会 リサイクル検討WG 9社
京セラ(株)、セイコーソリューションズ(株)、
ソニーモバイルコミュニケーションズ(株)、
日本電気(株)、日本無線(株)、(株)ネクス、
パナソニックモバイルコミュニケーションズ(株)、
(株)日立国際電気、富士通(株) - 対象機器:調査時点の各社の携帯電話・PHS端末、データ通信端末
- 実施方法:CIAJ移動通信委員会制定の「携帯電話・PHS端末の製品環境アセスメントガイドライン(第4版)」(以下、CIAJガイドライン)の全評価項目を調査票により調査、集計。
2.集計結果の概要
スマートフォンの伸長に伴い機能がアップすると共に、薄型化や軽量化を進める中、アセスメントガイドラインを考慮した設計の継続推進が引き続き求められています。アセスメント回答会社は6社、対象機器はスマートフォンを含む携帯電話・PHS・データ通信端末でした。
平成30年度の調査結果では、CIAJガイドラインの評価項目の91.7%〔全評価項目360項目(6社×60項目)中、330項目〕が、各社の製品アセスメントに盛り込まれており、CIAJアセスメントガイドラインを参考に、3Rを更に積極的に推進している状況が確認されました。
(1)リデュースの評価(評価項目数:23項目)
23の評価項目のうち15項目は全社において、8項目は5/6社において製品アセスメントに反映されていることが確認できました。また、20項目は環境対応を実施しており、リデュースを考慮した環境配慮設計が引き続き行われている実態を確認できました。
主なものは、下記の通りです。
- 省エネ対応(低消費電力モード機能の採用)。
- 取扱説明書への再生紙・無塩素漂白・非木材パルプ使用や、取扱説明書の重量の削減。
- 包装部品への再生材の優先使用。
- 化学物質の管理(J-Moss6物質、PVC、臭素系難燃剤・塩素系難燃剤)。
また、各社とも、通信速度の高速化や液晶の大型高精細化を進めていますが、機能UPによる容積・質量の増加分を吸収すべく、小型薄型・軽量化や、デバイスの効率化による消費電力の抑制の取組みなどが進みました。
一方、EU_RoHS指令の禁止物質に追加され、2019年に規制が始まっている4種のフタル酸エステル類(フタレート)の管理に関しては、各社の製品アセスメントに組み込まれて確実な環境対応が進んでいました。
(2)リユースの評価(評価項目数:5項目)
スマートフォンの液晶の大型化に伴い、商品サイズが大きくなったり、また、電池内蔵型の製品が増えたりする中においても、プリント基板の交換のしやすさや、取り付けネジの種類と数の維持に関して、取組みが継続されています。また、ACアダプタのリユースに関しても、USB Type-Cへの移行がほぼ終了し、リユースが進んでいることが確認できました。
(3)リサイクルの評価(評価項目数:32項目)
32の評価項目のうち24項目は全社において、7項目は5/6社において、製品アセスメントに反映されていることが確認でき、リサイクルを考慮した環境配慮設計が充実している実態を確認できました。
主なものは、下記の通りです。
- 携帯電話・PHS本体(筺体の塗料/インクへの重金属含有の回避。プラスチック材料/二次電池リサイクルマーク表示)。
- 包装部品(リサイクルしやすい包装材料選定。紙/プラ材料表示)。
- 取扱説明書(再生紙使用。使用済みで不要となった製品のリサイクル協力要請文記載。二次電池使用の記載)。
- リサイクルに好ましくない化学物質(鉛はんだ、重金属)の代替え。
引き続き実施率の向上が必要ですが、希少金属類の鉱種把握、汎用金属類の種類把握と優先使用に関する取り組みと、リサイクル性の向上に向けた筐体添付シール類の取り組み項目において、参加企業内での取組みの実施率向上が見られました。
3.今後の予定
携帯電話・PHSではスマートフォンの伸長に伴って、高機能化・薄型化・デザイン性重視の傾向がますます強くなっていますが、3Rに対する関心も社会的なレベルで一層高くなってきています。「使用済み小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律」(小型家電リサイクル法)が施行されてから6年が経過し、地方自治体で携帯電話・PHSを含む小型家電を回収する仕組みが整備されてきていることから、各社は、顧客のニーズと3Rの双方の要求を満足させるべく、引き続き製品環境アセスメントの内容を考慮した製品設計への取り組みがさらに重要になっていると考えています。
各社の製品アセスメントに組み込まれている状況の推移を確認し、各社の携帯電話・PHSおよびデータ通信端末などの3Rの取り組みに向け、引き続き、より一層の活動を推進して参ります。
本件に関するお問い合わせ
一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会
ICT基盤部長
多賀谷 裕
TEL. 03-5403-9358
添付資料3 モバイル・リサイクル・ネットワーク参加各社
(2019年3月31日現在)
通信事業者
- 株式会社NTTドコモ
- KDDI株式会社、沖縄セルラー電話株式会社
- ソフトバンク株式会社
販売会社
- 株式会社ビックカメラ
- 株式会社エディオン
製造メーカー
- 京セラ株式会社
- セイコーソリューションズ株式会社
- ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社
- 日本電気株式会社
- 日本無線株式会社
- 株式会社ネクス
- パナソニックモバイルコミュニケーションズ株式会社
- 株式会社日立国際電気
- 富士通株式会社