平成10年12月18日

景気判断、事業見通し等に関するアンケート調査結果について

 (社)電気通信事業者協会では、このたび加盟する第一種電気通信事業者137社(調査時点)を対象に景況感や事業の動向に関するアンケート調査を実施しました。電気通信業界は、景気のけん引役として期待される業界の一つですが、景気低迷の影響は当業界にも及んでおり、今年度の売上高が「良くなる」と回答したのは38%と「悪くなる」と回答した46%を下回っています。しかし、携帯電話や衛星系、地域系などの事業者では、全般的に良い見通しが得られています。
 調査結果の詳細については、以下のとおりです。なお、本文中で使用する業務区分は次のとおりとしました。
1.固定系(地域系を除く): NTT、長距離・国際系、衛星系
2.地域系: 電力系地域通信会社、CATV事業者
3.携帯電話: NTTドコモ、携帯電話事業者
4.PHS: PHS事業者
5.無線呼出し: NTTドコモを除く無線呼出し事業者

【調査概要】
1.実施時期:平成10年11月
2.調査対象:当協会全会員(137社)
3.回答者数:120社(回答率:88%)
業務分類固定系地域系携帯電話PHS無線呼出 合計
対象者数1335302633137
回答者数1229271933120
4.調査項目:(1)景気判断等、(2)10年度業績見通し、(3)10・11年度事業計画(4)11年度新規採用見通しと雇用調整


≪景気判断等≫


1.国内全体の景気動向について

(1) 現在の景況感について(半年前と比較して)

「良い」または「やや良い」と答えたのは1社のみであり、「悪い」55社(45%)、「やや悪い」43社(36%)と120社中約8割が景気が悪化していると感じている。

【主な理由】
・金融システム不安等を背景として、個人消費・設備投資が依然として低迷を続けている。
・依然として消費マインド・企業マインドとも好転の兆しは見られない。
・金融機関からの資金調達が困難になったこと。雇用状況の悪化等。

(2)−1.今後の景気を左右する重要な要因
(2)−2.今後の見通しと業況への影響について

特に多かったのが「個人消費・消費マインド」101社(84%)、「金融システムの安定」79社(66%)で3分の2以上の会員が重要な要因としている。「設備投資・企業マインド」49社(41%)がこれに次ぎ、「特別減税の実施」24社(20%)および「税制改正」22社(18%)と税制関係の要因、さらに「規制緩和の進展」18社(15%)等が今後の景気を左右する重要な要因として挙げられている。

項目今後の見通しと業況への影響
個人消費/
消費マインド
消費マインドの低迷は当分続くと思われ、回復には金融システムや雇用の先行き不安を解消し、先の緊急経済対策を迅速に実行することが重要。業況へは、通信費の削減による通話料収入の減少、回線利用量の圧縮、端末販売数の鈍化等マイナス面の影響が予想される。
金融システム
の安定
銀行の貸し渋り、金融不安が続くと予想される。業界でも資金調達に影響があり、設備投資に支障をきたす恐れもある。
設備投資/
企業マインド
企業の情報化投資への抑制・投資マインドの低下が続き、急回復はむずかしいと思われるが、当業界は日本経済の牽引役として景気回復の一翼を担えるよう努めるべき。



≪10年度業績見通し≫


1.10年度の売上高、経常利益の見通しについて

(1)売上高
「良い」または「やや良い」と回答した事業者が45社(38%)、「悪い」または「やや悪い」と回答した事業者が55社(46%)と全体では10年度の売上高が悪くなると見ている事業者がやや多かった。業態別では、携帯電話の67%および地域系の59%の事業者が「良い」または「やや良い」と回答しており、地域系を除く固定系(42%)、PHS(26%)、無線呼出し(0%)と比べて好調であった。
(2)経常利益
経常利益ベースでは、「良い」または「やや良い」と回答した事業者が27社(23%)、「悪い」または「やや悪い」と回答した事業者が72社(60%)と10年度の業績が悪くなると見ている事業者の割合が売上高の場合よりも多くなっている。業態別では、やはり携帯電話が「良い」または「やや良い」と回答した事業者が44%と最も多く、次いでPHS(32%)、地域系を除く固定系(25%)、地域系(21%)、無線呼出し(0%)の順だった。

2.売上高、経常利益それぞれの変化の理由

(1)売上高
売上高増加の要因としては、「加入者増」(携帯電話等)、「新規事業の開始」(長距離・国際、地域系等)、「新規顧客の獲得」(衛星系)等が主な増収要因となっている。反対に売上高減少の要因としては、「他通信手段への切替による加入者数の減少」(無線呼出し)、「競争激化・料金値下げ」(長距離・国際等)等が挙げられている。
(2)経常利益
経常利益増加の要因は、売上高と同様加入者増によるものが大半を占めている。経常利益減少の要因は、「加入者数の減少による収入減」(無線呼出し)、「競争激化に伴う販売コストの増加」、「設備投資増による減価償却費の増加」、「アクセスチャージ負担」等諸費用の増加が主要な減益要因となっている。


≪10・11年度事業計画≫


1.11年度事業計画について(前年と比べた変化)

業態主な内容
固定系
(地域系を除く)
インターネット等マルチメディア系サービスの拡大、次世代ネットワークの構築、海外の事業者と提携した国際通信サービスや衛星インターネットの提供などが計画されている。
地域系ATM、フレームリレー、CATVインターネットなどの高速デジタルサービスの拡充が計画されている。
携帯電話文字メッセージサービス等の新サービスや新料金プランの導入、料金値下げ等サービス・料金面の拡充が中心となる。
PHS文字通信サービス、新料金プラン、料金値下げ等携帯電話と同様サービス・料金面の拡充を図ることが中心となるが、PHSの特徴を活かして法人需要の発掘等新たな事業展開も計画されている。
無線呼出し11年度から発信者課金システムが導入される。

2.設備投資計画

(1) 10年度設備投資の対前年度伸び率

10年度の設備投資は、前年度と比べて「減少する」と回答した事業者が約半数の61社(51%)あり、「増加する」と回答した事業者37社(31%)を上回った。業態別では、携帯電話(増加13社/減少4社)と地域系を除く固定系(増加8社/減少2社)で「増加」が「減少」を上回ったが、地域系、PHS、無線呼出しでは、「減少」が「増加」を上回った.。

(2) また、その設備投資の内訳は、(複数回答)

「増設」に関する設備投資が67社(55%)と最も多く、「新サービス・新事業」も65社(54%)とほぼ同レベルとなっており、この2つで設備投資全体(のべ214回答)の約6割(62%)を占めている。このうち、設備投資額が「増加する」割合が最も高いのが「新サービス・新事業」で約7割(69%)、次いで「増設」が約5割(48%)の事業者が「増加する」と回答している。その他の「店舗/事務所」23社(19%)、合理化・省力化22社(18%)、「研究開発」16社(13%)、省エネ11社(9%)、公害防止10社(8%)については、設備投資額が「増加する」と回答したのは平均で17%に留まった。

(3) 11年度設備投資計画について

10年度と比較して減少すると回答した事業者が多い中で、衛星系における「新規衛星および後継衛星の調達」、無線呼出しにおける「発信者課金システム導入」、固定系での「インターネット対応」等による設備投資の増加が目立った。携帯電話は、既存システムへの設備投資が一段落し、今後はIMT2000関連等の新システムへの設備投資が中心となる見通し。一方、設備投資減少の要因としては、「大規模な設備投資が一段落した」、「サービスエリア拡充が一巡した」、「資金調達が困難」等が挙げられている。


≪11年度新規採用見通しと雇用調整≫


1.11年度新規採用見通しについて

10年度と比べて新規採用が「増加する」と回答したのは、12社(10%)にとどまり、「減少」42社(35%)、「採用なし」46社(38%)と約4分の3の事業者が新規採用を抑えている。業態別では、地域系を除く固定系および無線呼出しが採用増の事業者がゼロなのに対し、地域系では7社(27%)が新規採用増の見通しを立てている。

2.現在の労働力過不足感について

現在の労働力過不足については、半数の60社(50%)の事業者が「適正」と回答しており、「やや過剰」20社(17%)と「やや不足」22社(18%)を含めると8割を超える102社(85%)の事業者が「大きな過不足なし」と見ている。半年後の過不足についてもほぼ同様の傾向であり、約6割の71社(59%)が適正と見ており、「やや過剰」14社(12%)と「やや不足」14社(12%)を含めると99社(83%)の事業者が「大きな過不足なし」と見ている。

3.雇用調整、人件費対策について

雇用調整、人件費対策に関しては、「残業規制」が最も多く36社(33%)が行っており、次いで「中途採用の採用減」27社(25%)と「パートの不補充」26社(24%)といった新規採用以外の人員補充の抑制を行っている事業者が多かった。これらについては、半年後においてもほぼ同様の見通しであるが、「派遣労働者への代替」が13社(12%)から19社(16%)、希望退職の募集・解雇が8社(7%)から15社(13%)にそれぞれ増加する見通しである。