インターネットの適正利用について
インターネット接続サービスの提供にあたっての指針
平成13年3月16日制定
インターネットは、近年急速に普及し、企業のみならず個人の重要なコミュニケーションツール、情報受発信手段として、大きな役割を果たすようになった。また、IT基本戦略の決定とIT基本法の成立により、今後はこれまでより急速にインターネットの普及は進み、電子商取引などでのインターネットの活用も日常的に行われるようになると考えられる。
このようにインターネットが飛躍的に普及する一方で、他人を誹謗・中傷する内容や猥雑なものを自己のホームページや電子掲示板に掲載するなどの不適切な利用が社会的に問題となっており、インターネットを適切に利用するための環境整備が急がれている。
当指針は、利用者保護を目的に、業界として自主的に対応するための拠りどころとして、社団法人電気通信事業者協会法制度委員会がとりまとめたものである。とりまとめにあたっては、旧郵政省主催の「インターネット上の情報流通の適正確保に関する研究会」報告書を参考にさせていただくとともに、総務省総合通信基盤局電気通信事業部料金サービス課電気通信利用環境整備室から貴重な助言をいただいた。
社団法人電気通信事業者協会加盟各社は、インターネット接続サービスの提供にあたり、インターネットの適切な利用と普及を促進するため、次の各項目の実施につとめることとする。
1. 利用者保護の推進
インターネット接続サービスの提供にあたり、発生する諸問題に対する利用者保護施策の充実を図ることにより、インターネットの健全な普及・発展につとめることとする。
解 説
インターネットが広く一般に普及し、インターネット上の情報流通の適正化に向けた取組みの必要性が高まっている現状を踏まえれば、本指針の第5項に示すよ うに「通信の秘密」や「表現の自由」等を遵守し、法的知識や対応上のリスクに留意する必要はあるものの、事業者としては利用者保護を最優先事項ととらえ、 誠実に最善を尽くして取組むことが必要である。また、利用者保護の取組みは、インターネットの健全な普及・発展をももたらすものでもあり、インターネット 接続サービスを提供する事業者の社会的責務であると考えられる。
2. 青少年の保護
青少年の保護の観点から、情報を取捨選択することの可能な仕組み(フィルタリング、ラベリング等)の普及・促進につとめることとする。
解 説
インターネットの利用者層が拡大し、児童・青少年が日常的に利用するようになったが、インターネット上を流通する情報には青少年にとって有害と考えられるものが含まれている。事業者は、インターネットを情報流通手段として広く世の中に提供するものの社会的責務として、青少年の健全な育成に十分な配慮が必要である。
情報の受信者(保護者等)が青少年の健全な育成の妨げになると考えられる、わいせつ、暴力、残虐等の情報を取捨選択できるようにするためには、情報提供者がコンテンツにラベリング(情報内容のラベル表示)を行い、情報の受信者がフィルタリング(受け取る情報の取捨選択)を行うことが必要である。事業者は、青少年保護の観点から、フィルタリング、ラベリング等の普及・促進につとめることが必要である。
TCAでは、ホームページにフィルタリング設定方法を掲載し、普及・啓発の一助としている。
なお、携帯電話或いはPHSの場合は、サービス提供形態の相違からフィルタリングの方法が課題であり、その実施方法について検討を進めることが必要である。
【参考】
「インターネット上の情報流通の適正確保に関する研究会」報告書(12年12月)
「サービスプロバイダーは利用者にフィルタリングの必要性・方法の周知・啓発を行うこと。サービスプロバイダー等の団体は個々のサービスプロバイダーに対する周知・啓発活動を行うこと。」
3. 適切な利用方法等の周知
利用者に適切にインターネットをご利用いただくため、ご利用にあたっての留意点、マナー等について周知につとめます。
解 説
インターネットは今後益々普及し、年齢・性別等にかかわりなく、あらゆる層が日常的に利用するようになると考えられる。利用方法も、電子商取引、電子政 府、情報家電などに拡大される。また、国境をこえて利用されている。インターネットは元々、利便性は高いが使い方を誤ればハイリスクな情報通信手段であ る。利用者は、インターネットを利用するにあたり、どんな危険があるか、どうすれば危険を回避できるか、ネット上でやってはいけないことは何かなど、一定 の知識、マナーを理解する必要がある。ネット上のトラブルは、原則として自己責任で解決すべきであるが、事業者としては、インターネットの健全な利用と発 展及び利用者保護の観点から、色々な機会をとらえて、適正な利用方法、マナー等について、利用者に情報発信すべきであると考えられる。
TCAでは、ホームページにインターネットの適切な利用方法についてのページを開設し、利用方法の周知とやってはいけないことへの注意喚起を行い、利用者への周知・啓発の一助としている。
4. 不適切な利用についての注意喚起
以下の不適切な行為を行わないよう注意喚起につとめることとする。
- 他者の著作権、商標権等の知的財産権を侵害する行為、または侵害するおそれのある行為
- 他者の財産、プライバシーもしくは肖像権を侵害する行為、又は侵害するおそれのある行為
- 他者を差別もしくは誹謗中傷し、又はその名誉もしくは信用を毀損する行為
- 詐欺等の犯罪に結びつく行為、又は結びつくおそれのある行為
- わいせつ、児童ポルノ又は児童虐待にあたる画像、文書等を送信又は掲載する行為
- 無限連鎖講(ねずみ講)を開設し、又はこれを勧誘する行為
- インターネット接続サービスにより利用しうる情報を改ざん又は消去する行為
- 他者になりすましてインターネット接続サービスを利用する行為
- ウィルス等の有害なコンピュータプログラム等を送信又は掲載する行為
- 他者の設備等又はインターネット接続サービス用設備の利用もしくは運営に支障を与える行為、または与えるおそれのある行為
- その他法令もしくは公序良俗に違反(売春、暴力、残虐等)し、または他者に不利益を与える行為
- その行為が前各号のいずれかに該当することを知りつつ、その行為を助長する態様・目的でリンクをはる行為
解 説
不適切な行為にはどのようなものがあるかを、できるだけ具体的にあげたものである。当 然のことではあるが、これらの行為をしてはならないことを契約約款、ホームページ等に明 示する等の適宜の方法で利用者へ周知し、注意喚起を行うことが必要である。
5. 不適切な利用に対する是正措置
前項に掲げる不適切な利用に対し、当該行為を是正するための措置を講ずるようつとめることとする。なお、是正するための措置を講ずるにあたっては、次の事項への配慮も必要である。
- 発信者の表現の自由を尊重すること。
- 情報の内容に関する発信者の自己責任の原則を優先すること
- 通信の秘密及び個人情報を保護すること。
解 説
- 是正措置についての考え方
是正するための措置とは、注意喚起、情報削除、利用停止、契約解除等であり、これらの措置を各事業者の契約約款にもとづいて行うこととなる。その際は、「発信者の自己責任の原則を優先」するとともに、「発信者の表現の自由の尊重」「通信の秘密及び個人情報の保護」に配慮すべきことは言うまでもない。
被害を蒙っているとの申し出に対し十分な対応を行わず、そのために被害が拡大した場合は、事業者に不作為による責任が生ずることも考えられる。また、被害を蒙っているとの申し出を受けて、不適切とされる情報を削除したが、削除した情報が不適切でないことが後で判明したような場合は、事業者に発信者に対する権利利益の侵害の責任が生ずることも考えられる。このように不適切とされる情報の削除が可能かどうかの判断が難しいケースもあるが、事業者としては、状況を正確に把握し、最善と考えられる措置を迅速に実施するなど、誠実に対応することが必要である。場合によっては弁護士等専門家の判断を仰ぐことも必要であると考えられる。
なお、事業者が不適切情報の削除等の対応ができる範囲は、不適切情報の発信者が自らの契約者である場合に限定的される。事業者Aの契約者Bから被害があったとの申し出がAになされた場合であっても、不適切情報の発信者Cが事業者Dとの契約でホームページを開設しているような場合は、AがCに対して直接、注意喚起、情報削除等の措置を行うことはできない。しかしながら、AはBの被害状況を把握し、Dに措置を依頼する等の対応を行うよう努める必要がある。
- 参考(1) 「ニフティサーブ事件・東京地裁・第1審」
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ニフティサーブのフォーラムの会議室で、会員による他の会員に対する名誉毀損発言が繰り返され、それを放置したシスオペの責任が問われた事案。
「他人の名誉を毀損する発言が書き込まれていることを具体的に知ったと認められる場合には、当該シスオペには、その地位と権限に照らし、その者の名誉が不当に害されることがないよう必要な措置をとるべき条理上の作為義務があった」
- 参考(2) プロバイダーの責任の明確化に関するルール整備のあり方
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(「インターネット上の情報流通の適正確保に関する研究会」報告書より)
「他人の権利利益を侵害するとされる情報について、サービス・プロバイダー等による迅速で適切な対応を促していくため、サービスプロバイダー等の責任を明確化する必要があり、その際には、サービスプロバイダー等が責任を負わない場合を規定する方法(いわゆる【セーフハーバー】規定)によることが適当と考えられる。」
- 留意事項の考え方
- 発信者の表現の自由の尊重
「表現の自由」は憲法に保障された国民の権利である。ネット上の不適切と考えられる情報を事業者が自ら削除した場合、その情報が明らかに違法であるか他人の権利利益を侵害するものである場合を除き、発信者の表現の自由との関係が問題になることが考えられる。
事業者は、利用者保護のために十分な措置を行うべきことは当然だが、加害者であるとされる発信者側における表現の自由への配慮も必要である。
- 情報の内容に関する発信者の自己責任の原則を優先すること
インターネットは、個々人が不特定多数の人に向けて自由かつ容易に情報発信ができるという特性を有している。情報発信者は、原則として、発信した情報に関する法的責任を負うことを十分に認識する必要がある。また、インターネットを利用する際の利用者のモラルの向上が不可欠であり、社会的にコンセンサスが得られた基本的ルールを遵守する意識を一人一人の利用者が持つことが必要である。
事業者が問題の情報について、その発信者に連絡して指摘を行うとほとんどの人が、自主的に削除や訂正などの措置をとっているということであり、発信者の自覚が高まれば、問題のかなりの部分が解決するものと考えられる。
このようなことから、事業者は、情報の発信者が自己の責任を認識し、自主的に措置するような対応を優先して実施することが必要である。
- 通信の秘密及び個人情報を保護すること。
「通信の秘密」は憲法に保障された国民の権利である。また、電気通信事業者は、電気通信事業法第4条で通信の秘密を守る義務が課せられている。電気通信事業法でいう「通信の秘密」は「通信の内容にとどまらず、通信当事者の住所、氏名、発信場所等通信の構成要素や通信回数等の通信の存在の事実の有無を含む概念」(平成11年11月郵政省電気通信局「電気通信分野における個人情報保護法制の在り方に関する研究会中間報告書」)とかなり広く解されている。
従って、発信者の氏名等の発信者情報は、刑事事件で裁判所による令状が発せられた場合等限られた場合にしか開示することはできない。
例えば、インターネット上を流通する情報によって被害を受けたと主張する者から提訴等を目的に情報発信者の氏名等の開示を求められ、これに応じた場合は、電気通信事業法に違反するとともに情報発信者の権利を侵害することにもなりかねないと考えられる。 事業者は、被害の訴えに対し十分な措置を行うべきことは当然であるが、「通信の秘密及び個人情報の保護」への配慮も必要である。
- 発信者の表現の自由の尊重
【参考】
発信者情報開示に関するルール整備のあり方(「インターネット上の情報流通の適正確保に関する研究会」報告書より) 「当事者による紛争解決を促進していくため、一定の場合に発信者情報を開示するための制度の整備が必要。第三者機関による判断の仕組み等と併せて、問題 を最終的に解決する立場にある裁判所が関与して解決する手続きの整備を図ることが望ましい。」
6. お問合せ・苦情への対応等
- 自己の提供するインターネット接続サービスに関する苦情に対応するため、苦情受付の窓口を明確にすることとする。
- 利用者から苦情を受け付けた場合、苦情の内容及び事実関係を迅速かつ十分に確認するようつとめることとする。
- 苦情の内容、原因及び対応の事例を継続的に収集し、必要に応じて自己の運営の見直しや利用者への周知等につとめることとする。
- 「インターネット自己防衛マニュアル」(テレコムサービス協会ホームページ)
- 「インターネット苦情事例」(テレコムサービス協会ホームページ)
フィルタリング設定方法
- 「レイティング/フィルタリング情報」 (インターネット協会ホームページ)
- ダイヤルQ2接続チェックプログラム(NTT東日本ホームページ)
- 「国際電話番号ダイヤルQ2検知ソフト」(KDDIホームページ)